Undiscovered Emerald

 それはそれは花々しい幸福の門出だった。ここは霧煙る薄暗き街だというのに、空から射し込む日光の帯が彼等を包んでいるのでは、と錯覚したほどだ。スティーブン・A・スターフェイズは長年の戦友と、彼が選んだ伴侶の真白きシルエットを祝福した。戦友が生まれ持つ身分にしてはささやかな、けれどまごう事なき光に満ちた儀式だった。
 病めるときも、健やかなるときも。
 神父の言葉に誓いを立てるふたりの背。スティーブンは視線を彼等から外し、それとなく周囲を眺めた。数少ない参列者はすべて見慣れた顔触れだ。同僚のK.Kなどは麗しき目許に涙まで浮かべている。ひょんな事からライブラの内側へやって来た少年も、優しい微笑みと共に上司の門出を祝っていた。彼の肩ではお馴染みの音速猿が式のゆくえを大人しく見守っている。
 誰もがみな新郎新婦の未来を祈っていた。それは、スティーブンの右隣に立つ妙齢の女も同様だった。シンプルだが仕立てのいいドレスを纏った彼女は毅然と背を伸ばし、穏やかな視線の先に、くちづけを交わす運命のふたりを捉えている。
 スティーブンは視線を正面へ戻して、それから。
 ―――病めるときも、健やかなるときも、今度もずっと、おそらく永遠に。
 この女はあの男の背を見つめ続けるのだろうな、と思った。



 その夜、そう遅くない時間帯にスティーブンはアパートメントに戻った。祝い事の余韻がまだ色濃く残っており、全身を快い疲労感が包んでいる。エレベーターを出、家のドアに鍵を差し込んだ瞬間、違和感があった。手ごたえがない。鍵が、開いたままなのだ。
 毎朝、自宅を出る際には必ず施錠を確認している。合鍵を持つ他人と言えばスティーブンが雇っている家政婦のヴェデットが真っ先に思いつくが、真面目な彼女がこんな凡ミスをする訳がない。第一、彼女はきょうオフの筈。家主であるスティーブンの許可を得ずに来訪するなど有り得ない。となれば、残る可能性はあとひとつだけだった。そしてもうその可能性で十中八九正解だろうと見当は付いた。
 鈍い金属音と共に玄関を開ける。当然、室内は真っ暗闇に包まれていた。ネクタイを指で緩めながら、部屋の奥へ向かう。こつ、こつ、という聞き慣れた自分の足音に混じって、外界の喧騒が微かに聞こえた。明かりを付ける間でもない。ダイニング・キッチンを兼ねたリビングは無人だった。
「……となれば、こっちか」
 スティーブンはひとりつぶやいて、奥の寝室へ歩を進めた。
 予感はあった。もはや確信に近い予感が。昼間、披露宴後のディナー・パーティで、体調が悪いと申し訳なさそうに抜けていった横顔が脳裏にチラつく。まったくもって無意識のうちの変化だったが、気付けば歩調が早まっていた。
 ベッド以外は目立った家具のない寝室に、細長い影が落ちていた。
「不法侵入とはいただけないな。
 沈黙を破った一声に、名を呼ばれた影が振り向いた。窓硝子から入り込むヘルサレムズ・ロットのネオン以外に光源のない部屋では、彼女の表情、その細部までを伺うことはできない。スティーブンは明かりを灯すべく壁のスイッチに手を伸ばしたが、一瞬の逡巡ののち、やめた。代わりにベッド脇にある間接照明のスイッチを押した。滲んだ橙が不法侵入者の表情をぼんやりと浮かび上がらせた。どうやら泣いてはいないようで、スティーブンは少し意外に思った。思えばこの無駄に堆積した付き合いの中で、彼女の泣き顔など一度も拝めたことがないのだ。きょうこそはという妙な期待があったのかもしれない。あいつが伴侶を得たきょうこそは。
「……ごめんなさい」
 間を置いて発された返事は、わずかに掠れていた。スティーブンと彼女の距離は約四メートル。ベッド脇から窓際までの空間に、群青色の沈黙が満ちた。スティーブンはネクタイを解いてベッドに投げると、シャツのボタンをふたつ外した。喉が楽になる。ディナー・パーティで摂取したアルコールはすっかり抜けてしまっていたが、息にはまだ僅かにワインの香りが混じっていた。
 物言わぬ同僚の傍まで歩み寄る。触れはしない。彼女は目を伏せたまま、心ここにあらずといった空気を漂わせている。何か重要な核が抜けてしまった風情だ。黒い目は何を見ているのか。
「体調、悪いんじゃなかったのか?」
 女は被りを振る。
「クラウスも心配してたぞ」
 その四文字がトリガーだった。女の身体がわずかに強張ったのを、スティーブンは認めた。そして心の裏側がどくりと疼いた。なんともまあ、弱い。ここまで弱体化した彼女は初めて見る。いつもはその血の呪いを持って目の前の壁を次々と破っていく背が、肩が、かすかに震えていた。これが現実。あたたかな幸福だけを詰め込んだあの教会で、パーティ会場で、周囲の皆のように優しい笑顔できょうの主役を祝福していたあの姿は、虚構で組み立てられた張りぼてだったのだ。スティーブンはそれを知っている。スティーブン「だけ」がそれを知っている。が顔を上げた。その瞳の内側に無表情を気取ったスティーブンが映り込む。薄いルージュに彩られた口唇が開いた。
「素敵な、式だった」
 これにはスティーブンも呆れた。何を言うのかと思えば。言うに事欠いて、そんなことを口走る。憐み混じりの笑い声が漏れてしまった。哀れだ。絶望の淵で微かな理性に縋り付いている、目の前のちいさな生きもの。彼女の鎖骨の狭間でエメラルド・ネックレスが揺れていた。なんて意地らしい輝きだろうか。そんなちいさな宝石に誰かの影を重ねることでしか生き延びていけない女が、目の前にいた。
 スティーブンはを見下ろす。彼女が胸に秘めた想いが堆積するさまを、スティーブンはすぐそばで第一層目から眺めてきた。スティーブンとが慰めという秘密を共有しだしたのは、層がだいぶ厚みを増した頃だった。彼女はいつも模範的な理性できちんと自分の内側に恋を収納していた。まったく立派な芸当だった。しかしそれはある日崩れたのだ―――彼女の想い人の隣に、きれいな女性が並んだあの瞬間から。
 は泣かない。こんなときでさえも。ただ、その強がりが限界に来ているのは容易に知れた。薄っぺらい肩は震えていたし、ちっぽけな手は柔らかい素材のフォーマル・ドレスを握り締めて離さない。そんなに力を籠めたら皺が寄るよと、普段のスティーブンだったら気遣いを見せたはずだ。しかし今は違う。
 ――素敵な式だった。
 スティーブンは自分でも預かり知らぬうちにいびつな笑みを浮かべていた。
「ああ。素敵な式だったさ。君なんてまるで入り込めない、完璧な幸福があの教会にはあった。だろう?」
 例えるならその瞬間、ぴしり、という空気にヒビが入るような音が響いた。まるで教師が生徒に念を押すような言葉。はわずかに見開かれた瞳でスティーブンを見上げている。その瞳は、しかし、数秒後に逸らされた。眼球の表面がみるみるうちにうるおっていく。スティーブンは心中でちいさく笑った。
 ああ、泣くぞ、泣くぞ。
「あいつの幸福を担える異性は君じゃなかったよ」
 ああ、ほら。
「………っ、」
 ―――ほら泣いた。
 ああ、と、の口唇から漏れる嗚咽を、スティーブンは非常にいとおしく思った。思ってしまった。遂に決壊地点を越えたの肩をそっと抱き寄せる。銀幕の中を生きる往年の俳優のように。はもはや欠片の抵抗すら見せない。非道な男の腕の中で泣きじゃくるだけだ。次から次へとこぼれ落ちる大粒の透明がスティーブン気に入りのシャツにいくつもの染みを作った。グレイの布地に散らばった歪な円は、しばらく消えてくれそうにない。
 の両頬を両手で包み込む。人差し指の側面に、彼女のしずくが伝い落ちてくる。重力に従ってスティーブンの手のひらを通過していったそれを、舌で舐めとった。ゆっくりと、惜しむように。舌先に甘い痺れが走る。それを何度も繰り返し味わうために、幾度となくの体液を求めた。表情をぐしゃぐしゃに歪めて泣き続ける彼女はまるで迷子の幼児さながらだ。道を離れ、よすがを失い、彼女の生はもう鮮烈さを取り戻せない。スティーブンはそっと、のネックレスに手を伸ばした。冷たく濡れたペンダント・トップに触れる。そのままの項まで手を這わせ、ネックレスの留め金に指をかけた。
「もっと泣くといい。もっと」
 は今、行き場を失くした想いを埋葬する墓穴を掘っているさなかだ。邪魔をしてはかわいそうだろう。嗚咽の度にちいさく跳ねる狭い背中を撫でてやると、は消え入りそうな声で何事かをつぶやいた。
「うん。俺をクラウスだと思いたいのなら、好きなだけそうすればいい」
 彼女を抱き寄せるスティーブンの手のひらには、ひとつの装飾品が閉じ込められていた。



 誰よりも幸せになって欲しい人がいた。
 この世の誰よりも、陽だまりの中で笑っていて欲しいと願った人がいたのだ。
 その願いはどこまでも透き通っていて、あたたかく、道を照らし、未来を感じさせてくれた。
 ただ、あるとき気付いてしまった。
 その人の幸せに、自分の存在が幾ばくも影響を及ぼすことがないと。あのエメラルドの内側に、愛情を持って映り込める存在は自分自身ではないと。
 の悲劇はたったそれだけだ。
 それだけが、どこまでも底の深い絶望だった。

 開いた目蓋が酷く重く、熱を持っていたために、自分がゆうべ泣き疲れて眠りについたのだと思い知らされた。視界がまだ明瞭でない。身を横たえたシーツのにおいは実によく知ったものであったから、知らない人間の家で寝ている訳ではないと分かっては安堵した。疼く瞳をぱちぱちと瞬かせて、緩慢に上体を起こす。
 ふと見下ろした隣で、スティーブン・A・スターフェイズが眠っていた。
「…………」
 穏やかそのものの横顔を眺めて、ぜんぶを思い出してしまった。きのうの朝、昼、夜。幸福だけが詰め込まれた聖なる空間。あたたかい拍手、そして何もかもに取り残された自分自身の哀れさ。
 長年の無理が祟って、の我慢は遂に決壊地点を迎えた。それがきのうの夜、この部屋での出来事のすべてだった。
 まだ眠り足りない身体を引きずり起こし、ベッドの縁に座る。は自分の背中越しにちいさな寝息を聞いた。身の丈に余るグレイのシャツが、頼りない素肌をあたためた。
 決して泣かないようにしてきた。それだけがの矜持だったのだ。この恋を生きていたいと願った、ただの馬鹿な女の、実にくだらないひとつのルール。惨めに泣き喚かない。誰かに救いを求めない。結局、どちらも守り抜くことができなかった。最も身近で、最も便利で、最も優しい体温と素肌に逃げ込んでしまった。
 けれどもうすべてまっさらだ。
 誰よりも幸せになって欲しいあの人は、ほんとうに、誰よりも幸せになってしまったのである。に出来ることなどもう何もない。いや、最初から何もなかった。はひとり芝居に全力で興じて、結果、挫折しただけに過ぎない。こんな残酷は世界中のどこにでも石ころのように転がっている。の身の上だけに起こった出来事では有り得ない。
 なのに。
 ありふれた想いが陳腐に終わっただけだというのに、何故、まだ、瞳の端っこが熱く滲み出すのだろう。一度はクリアになりかけた視界が再度歪み出す。頬が濡れた。閉じた目蓋の裏できのうがフラッシュバックする。まるでどこかの美術館に飾られた絵画のような誓いのくちづけが、思い出されて。
 ――あの場所に立てなかった自分だから、今、ここにいるのだと。
「……君はずいぶんと泣き虫なんだなあ、」
 そんなつぶやきが聞こえてくるまで、は、規則正しく続いていた寝息が止まっていたことに気付かなかった。背中に流れたの髪を、大きな手が撫でていた。
「……顔も見えないのに、泣いてるなんて分かる?」
「分かるさ。背中でね」
 そんなに情けない肩甲骨を見せびらかしていただろうかと、は少し不安になる。しかし、これまでありとあらゆる汚泥を晒し尽くした男相手に、今更そんな心配は無用とも言えた。目尻を拭い、幼児のように鼻を啜る。
「……そっか」
 その返事を機に、は立ち上がろうとした。――はずなのだが。
「、なに」
 グレイのシャツを掴む手のひらが、をこの白い過ちの舞台から逃がしてくれない。嫌々ながらも振り返る。そうして予想外にも、あどけない、何の仮面も纏わない表情の男と視線があった。は虚をつかれた。そんなふうに少年の顔をしているスティーブンを見るのは初めてだった。
 皺くちゃのシーツに転がり、自分の片腕を枕にして転がる男は、まっすぐにを見ていた。のシャツまで伸ばされた左腕の、うっすら浮き上がった筋肉の線が、きれいだった。
「もう少し眠っていたって構わないと思わないか」
「…どうして。きょうからまた日常だよ」
「珍しいことだけど、きょうだけはきっと、俺たちのボスが顔を出すのは遅れるだろうからね」
 の表情に苦いものが走ったからだろう、スティーブンはまた、彼がいつもそうするように、酷薄な口唇でうっすらと笑った。そして、ただシャツの裾を掴んでいるだけだった彼の手は、更なる暴挙に出た。の身体が傾ぐ。息が肺の奥で詰まる。背に触れるシーツはまだあたたかいはずなのに、見上げる男の表情がどこまでも冷えていて、これでは満足に呼吸もできない。
「どうせなら俺たちも、肩を並べて『執務室』に顔を出してみようか? 気怠そうな顔をしていると尚良いかもしれない」
「……やけに絡むね。まだお酒残ってるんじゃな、」
 言葉の最後は口唇の内側に封じ込められる。抵抗を挟む隙すらない。いったいどこに放っておいたのか、ネクタイを取り出したスティーブンは、細長いそれでの両手首を固く結んでしまった。こうなってはも降参の姿勢を取るしかない。平穏だった朝は一瞬にして顔色を変えてしまった。わずかに手首に食い込んだ布地がほんのわずか痛い。
 焦る鼓動とは裏腹に、の心は妙なことに澄んでいった。深い口付けで呼吸を止め、吸い付かれているのか噛み付かれているのか分からない強度で喉許に痕を残される。何故だか知らないが、今の自分は、目の前の彼に狂おしいほど求められているのが分かった。そんな、薔薇を煮詰めたような瞳で、縋るように見つめるのはやめて欲しい。与えられた情報をどう処理すればいいか分からなくなる。今、物理的に見ればのすべては彼に握られているも同然であるはずなのに、精神的には真逆だと感ぜられた。
 今、ほんとうに泣きたいのは、彼なのではないかと思えて――。
 の頬に何かのしずくが落ちてくる。
「苛々するんだよ。君を見ていると。ほんとうに」
 男は、吐き捨てるように言った。



 ひとは簡単に、それこそ数瞬で心変わりを可能とする生物なのだが、稀にその常識が適用されないパターンもある。スティーブンはどうだろうか。試しに彼は自問してみたが、すぐには結論が出て来ない。ちょっとやそっとじゃ揺らがない芯ならば持っている。そういう意味ならば、なるほど頑固かも知れない。しかし、合理的・論理的判断に基づいて「敵」という判を押した相手なら、例えつい数瞬前まで共にディナーを頂いていた人間でさえ、直ぐさま処分できる。家畜を断頭するように。だからきっと、スティーブンの内部には様々な矛盾が渦巻いているはずだ。簡単には説明できない。ありとあらゆる複雑を内包し、きょうもまた、生きている。
 ならば目の前の女はどうだろう。
 嗚咽の上に嗚咽を重ね果て疲弊した結果、泥のように眠る女。癖のない髪、肌、首筋には幾つかの噛み跡とちいさな内出血。スティーブンよりはいくつも年下だが、会話をしていると年齢の隔たりを感じさせない。一見すれば、非常識の坩堝のようなヘルサレムズ・ロットには似つかわしくない人間だった。それが何の因果かスティーブンと似通った能力を持ち、同じ組織に身を置いて、手酷い方法で抱かれていたりする。
 はどちらかといえばシンプルな女で、矛盾する要素はあまり持っていないような気がした。あくまでスティーブンの所感だが。あまり強情でも、欲深でもない。ただひとつ、「あの男」が関わった場合のみ、彼女の辞書では「盲目」という文字が強調されてしまうらしい。その慕情はほとんど憧憬のようなものだと、いつだか彼女は語っていた。スティーブンの家のダイニング・キッチンで、持ってきた安ワインを一本開けた、赤い横顔で。
「……う、んん」
 が寝返りを打ち、スティーブンの方を向いた。寒かろうと着せてやったグレイのシャツはすっかり皺だらけだったが、嫌だとは思わなかった。スティーブンは右手をそっと伸ばすと、の右頬に触れた。涙のあとは残っていない。はじめはあの男のために、そしてついさっきまではスティーブンからの暴力染みた快楽のために、水分の貯蔵がゼロになるまで泣き続けていた顔。そっと抱き締める。華奢な身体からは彼女のにおいがした。誰かを必死に想い、その結果として身をズタズタに引き裂かれた女のにおいがした。
 スティーブンはヘッドボードに手を伸ばすと、ちいさな抽斗からエメラルドのネックレスを取り出した。金の砂のようにさらさらと心地よいチェーンが手のひらをくすぐる。そして次の瞬間、それを思いっきり寝室の向こうへと投げ捨てた。
 かしゃん、という悲鳴にしては控えめな断末魔が聞こえた。
 スティーブンは、にほんとうの痛みを与える傷の理由にはなれなかった。喉許を守護する碧の宝石にもなれないのだ。その事実に対して憐れみすら抱いてこなかった。しかし今、酷い焦燥が身体を包む。今さらながら、の気持ちが分かってしまった。誰かひとりの幸せを必死に願い、そして、その幸せを構成する一部に自分自身を嵌め込んでしまいたいという、とても分かりやすい気持ちを、遂に理解してしまった。
 おのれの胸で眠りにつくその女へ。
 いとおしいという五文字を真正面から伝えるには、もう、随分と手後れな気がしてならない。
 
 壁の時計が九時を指している。きょうは家政婦のヴェデットは来ない。朝陽にあたためられたカーテンの隙間から弱い光が差す。ヘルサレムズ・ロットの喧騒が、変わりのない日常のはじまりを伝えている。
 遠くで携帯電話が鳴った。どうせ、あの男からの遅れるという連絡だろう。
 
 がまた寝返りを打ち、スティーブンに生白い背を向けた。
 そして彼は、この女はさぞかしウェディング・ドレスが似合うだろうなと、そんなことを思った。

(15/06/13)